2年前に掛けた針金を黒松から外します。食い込みの浅い箇所と深い箇所では、手の入れ方が変わります。大切なのは外し方だけでなく、食い込む前に気づくこと——毎日の水やりの視線が、そのタイミングを知らせてくれます。
針金外しは、地味な作業に見えます。ハサミで切って、取り除く。それだけのことです。けれど、技術の手順よりも先に問われるのは、タイミングです。
食い込み始めた時点で外す——それが原則です。食い込んでからでは遅い、という意味ではありません。食い込み始めたそのとき、針金はすでに仕事を終えているのだ、ということです。そこに気づかず放置すると、枝は刺激を受け続け、太くなっていきます。一年、二年と丁寧に細く育てた枝が、自分のタイミングのずれで台無しになる。傷は癒えても、太くなった枝は元には戻りません。
深く食い込んだ針金には、食い込み箇所に直接ハサミを入れません。まず隣の食い込んでいない部分を切り、少し手前に戻して緩める。それから反対側からアプローチして外す。力で引き抜くのではなく、順番を変えて、針金自身に緩んでもらう。
切れ味のいい道具を使うのも同じ理由です。刃が鋭ければ、余計な方向に力がかからない。枝に無駄な負担をかけない。傷が生じたら、カットパスターをすぐに塗る。手順のひとつひとつが、樹への配慮でもあります。
「1年前後が目安」とはいっても、それは数字ではありません。樹種も、枝の位置も、成長の勢いも、針金の太さも——条件はすべて違います。だからこそ、水やりや日々の管理のなかで、今日の針金の状態をちゃんと見る。食い込んでいないか。緩んでいないか。その視線が、タイミングを知らせてくれます。
針金外しは、特別な日の特別な作業ではありません。毎日の関わりの中に溶け込んでいて、気づいたときに手を入れる。日々の目が、樹を守ります。
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