五葉松の鉢上げ

上級:舟 -Fune- 素材の養成

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父の代から約70年育ち続けてきた五葉松を、畑から養生鉢へ移す一日です。3年前の根回しが今日という日を可能にしました。平松浩二と弟子2人がチェーンブロックを使いながら丁寧に行う鉢上げは、完成への到達ではなく、次の段階へ渡すための継ぎ目です。

26:58
Fune
鉢上げ ★★★★★ 五葉松

父の代から続く時間を、動かす

鉢から出した根鉢を眺めるとき、平松浩二は何を見ているのでしょう。目の前の根の状態だけでなく、この五葉松が過ごしてきた70年以上の時間を、まず受け取るような間があります。

父の代から畑で育てられてきた樹です。チェーンブロックを使わなければ持ち上げられないほどの重さがある。そういう樹を動かすには、それなりの準備が必要です。

3年前に仕込んでいたもの

この鉢上げを可能にしたのは、3年前の根回しです。太い底根を切り詰め、花コウ土の中で細根が育つのをひたすら待った。その時間があったから、今日の根鉢は比較的浅く、扱いやすい状態になっています。

根回しとは、未来の余白を今のうちに作っておく作業です。今日のための準備であり、さらにその先——最終的な盆栽鉢への移植——のための布石でもある。一手の判断が、数年後の選択肢を増やしたり狭めたりする。

木製鉢という選択の意味

今回の養生鉢は木製で、特注品です。この木の根鉢に合うサイズの陶器鉢が、既製品にはなかった。だから木で作った。それだけのことですが、その判断の裏には、見た目よりも根の健康を優先するという明確な意志があります。

用土の配合も同じです。日向土を底に敷くのは通気性のため。山砂に赤玉土を混ぜるのは、水はけと保湿のバランスを取るため。数字の比率は、この木の今後の数年を見通した読みです。養成の期間中は、審美より根の状態が先に来る。

完成ではなく、継ぎ目

正面を決めるとき、養成鉢の段階では「ある程度で」という判断になります。妥協ではありません。最終の鉢への移植時に、正面はあらためて問われる。この鉢上げはそのときのための準備に過ぎない、という見通しがあるからです。

父の代から受け取った70年分の時間を、木製鉢に移して、次の段階へ渡していく。完成ではなく、継ぎ目。盆栽を育てるとは、そういう場所に何度も立つことなのかもしれません。

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